AI導入支援の実例|経費処理・電話受付・顧客管理をどう仕組み化したか
AIを導入しただけでは、業務は自動化されません。
成果につなげるためには、現在の業務を整理し、
- AIに任せる部分
- システムで自動処理する部分
- 人が確認・判断する部分
を明確にする必要があります。
例えば、領収書をAIで読み取れても、その後の承認や会計処理につながらなければ、業務全体の効率化にはなりません。
電話受付も同じです。AIが電話に出るだけではなく、内容を整理して担当者へ正しく引き継ぐところまで設計する必要があります。
本記事では、名古屋の中小企業におけるAI活用を想定し、経費処理・電話受付・顧客管理をどのように仕組み化するのか、具体的な構成例を紹介します。
AI導入支援とは、AIツールを選ぶことではない
AI導入支援というと、ChatGPTやAIサービスの選定をイメージする方が多いかもしれません。
しかし、中小企業のAI活用で本当に重要なのは、AIツールの選定よりも業務全体の設計です。
AI導入支援では、一般的に次のような順番で検討します。
- 現在の業務を確認する
- 時間がかかっている作業を特定する
- AIに任せられる部分を見つける
- 既存システムとの連携方法を考える
- 人が確認すべきポイントを決める
- 小さな範囲で試す
- 結果を確認しながら改善する
AIだけで処理を完結させるのではなく、AIと人、それ以外のシステムを組み合わせることがポイントです。
AI活用の対象業務をまだ決められていない場合は、先に「AIでどの業務を効率化できる?名古屋の中小企業で考えられる活用例10選」をご覧ください。
実例1 領収書の処理をAIで仕組み化する
経費処理では、領収書やレシートの内容を担当者が目視し、会計ソフトや表計算ソフトへ入力しているケースがあります。
この業務には、次のような作業が含まれます。
- 領収書を受け取る
- 日付を確認する
- 支払先を確認する
- 金額を確認する
- 内容や用途を確認する
- 勘定科目を判断する
- 台帳や会計ソフトへ入力する
- 原本または画像を保存する
「領収書をAIで読み取る」という説明だけでは、このうち一部しか自動化できません。
仕組み化の流れ
領収書処理を仕組み化する場合は、例えば次のような流れを設計します。
- スマートフォンで領収書を撮影する
- AI-OCRが日付・金額・支払先などを読み取る
- 読み取った情報を決められた項目へ整理する
- 社員が利用目的や部門などを追加する
- 担当者が内容を確認する
- 承認済みデータを経費台帳へ登録する
- 会計処理に必要な形式で出力する
- 領収書画像と処理データを関連付けて保存する
重要なのは、AIが読み取った情報をそのまま確定しないことです。
画像の状態や領収書の形式によっては、日付や金額を誤って読み取る可能性があります。そのため、特に導入初期は人による確認を残します。
AIに任せやすい部分
- 日付・金額・支払先の読み取り
- 領収書内容の文字データ化
- 項目ごとのデータ整理
- 過去データを参考にした勘定科目候補の提示
- 月別・担当者別の集計
- 不足項目の検出
人が確認すべき部分
- 読み取った金額が正しいか
- 業務に必要な経費か
- 適切な勘定科目か
- 社内規程に合っているか
- 承認してよい申請か
経費処理では、AIに会計判断を丸ごと任せるのではなく、「入力と整理をAIで支援し、最終判断は人が行う」設計が現実的です。
実例2 電話の一次受付をAIで仕組み化する
電話対応は、1件あたりの時間が短くても、作業を中断させるという問題があります。
特に少人数の企業や店舗では、
- 接客中に電話が鳴る
- 営業電話に時間を取られる
- 担当者が不在で何度も折り返す
- 電話内容が正確に伝わらない
- 営業時間外の電話を受けられない
といった課題があります。
AI電話受付では、電話に応答することだけでなく、用件を整理して次の行動につなげる設計が重要です。
仕組み化の流れ
電話受付をAIで仕組み化する場合は、例えば次のような流れになります。
- AIが電話に応答する
- 会社名・氏名・連絡先を確認する
- 問い合わせ内容を聞き取る
- 用件を分類する
- 会話内容を文字に変換する
- 担当者が確認しやすいように要約する
- メールやチャットなどで担当者へ通知する
- 緊急度や内容に応じて折り返し対応する
「担当者に代わります」という受付だけでは、電話業務の負担は十分に減りません。
誰からの電話か、何の用件か、いつまでに対応する必要があるかを整理して渡すことで、初めて業務改善につながります。
AIに任せやすい部分
- 会社名や氏名の聞き取り
- 基本的な問い合わせへの案内
- 営業時間や所在地の回答
- 電話内容の文字起こし
- 問い合わせ内容の要約
- 担当部署の分類
- 受付内容の通知
人が対応すべき部分
- 個別の見積もり
- 契約に関する判断
- 苦情や重要な相談
- 専門的な説明
- 例外的な依頼への対応
電話受付AIの目的は、すべての電話をAIだけで完結させることではありません。
定型的な一次受付をAIが担当し、人は判断や説明が必要な電話に集中できる状態をつくることが目的です。
実例3 顧客管理をAIで仕組み化する
顧客情報が名刺、メール、表計算ソフト、担当者の記憶などに分散している企業も少なくありません。
この状態では、
- 前回の問い合わせ内容が分からない
- 誰が対応したのか分からない
- 見積もり後の連絡を忘れる
- 担当者が休むと対応状況が分からない
- 過去の顧客へ適切な案内ができない
といった問題が発生します。
CRMを導入するだけでも顧客情報は整理できますが、入力作業が増えると、次第に使われなくなる可能性があります。
そこでAIを使い、記録や整理の負担を軽減します。
仕組み化の流れ
顧客管理をAIで仕組み化する場合は、例えば次のように設計します。
- 電話・メール・問い合わせフォームから情報を取得する
- 顧客情報と問い合わせ内容を整理する
- 既存顧客か新規顧客かを確認する
- 対応履歴としてCRMへ登録する
- AIが問い合わせ内容や商談内容を要約する
- 次に必要な対応を候補として提示する
- 担当者が内容を確認して対応する
- 対応結果を記録する
- 未対応や長期間連絡していない顧客を抽出する
AIは、散らばった情報の整理や要約を得意としています。
一方で、顧客との関係性を考えた判断や、提案内容の最終決定は担当者が行います。
AIに任せやすい部分
- 問い合わせ内容の分類
- メールや商談記録の要約
- 顧客情報の項目整理
- 類似する過去案件の検索
- 次回対応候補の提示
- 未対応案件の抽出
- 営業報告の下書き
人が判断すべき部分
- 顧客への具体的な提案
- 見積金額や契約条件
- 対応の優先順位
- 顧客との関係性を踏まえた連絡
- クレームや重要案件への対応
CRMは顧客情報を保存するだけの仕組みではありません。
「次に誰が何をするのか」が分かる状態をつくることで、営業活動や顧客対応に活用できます。
3つの実例に共通する考え方
経費処理、電話受付、顧客管理は異なる業務ですが、AI導入の基本的な考え方は共通しています。
1.入力だけでなく、その後の処理まで考える
領収書を読み取る、電話を文字にする、メールを要約するだけでは、部分的な効率化にとどまります。
その情報をどこに登録し、誰が確認し、次に何をするのかまで設計します。
2.AIと既存システムをつなぐ
AI単体で業務を完結させようとすると、かえって手作業が増えることがあります。
必要に応じて、次のような既存環境と連携します。
- 会計ソフト
- Googleスプレッドシート
- メール
- ビジネスチャット
- 顧客管理システム
- 問い合わせフォーム
- 社内データベース
すでに社内で使っているシステムを確認し、無理なく運用できる構成を選ぶことが大切です。
3.最終確認を行う人を決める
AIには誤認識や不適切な分類が発生する可能性があります。
そのため、
- 誰が確認するのか
- どの段階で確認するのか
- どの条件なら自動処理してよいのか
- 問題があった場合にどこへ戻すのか
を決めておきます。
4.例外処理を先に考える
通常の処理だけでなく、例外が発生した場合の対応も必要です。
例えば、
- 領収書の文字が読めない
- 電話の音声を正しく認識できない
- 同姓同名の顧客がいる
- 必要な情報が入力されていない
- システム連携が一時的に停止した
といった場合です。
例外をすべてAIに判断させず、人へ引き継ぐ仕組みを用意します。
5.最初から全社展開しない
最初は、一つの業務や一つの部署に限定して試します。
小さく試す進め方については「中小企業のAI活用は何から始める?名古屋のITコーディネータが30日間の進め方を解説」で詳しく解説しています。
AI導入前に確認したい5つの項目
AIによる仕組み化を検討する際は、次の項目を整理します。
1.現在の作業時間
対象業務に、1日または1か月でどのくらいの時間を使っているか確認します。
2.処理件数
領収書の枚数、電話の件数、問い合わせ件数などを把握します。
3.作業する人
誰が入力し、誰が確認し、誰が最終判断しているかを整理します。
4.使用中のシステム
会計ソフト、表計算ソフト、CRMなど、現在使っている環境を確認します。
5.改善後の目標
単に「AIを導入する」のではなく、
- 入力時間を減らしたい
- 電話による作業中断を減らしたい
- 対応漏れを防ぎたい
- 顧客情報を共有したい
など、解決したい問題を明確にします。
この整理が不十分なまま開発を始めると、現場で使いにくい仕組みになる可能性があります。
「名古屋の中小企業がAI導入で失敗する7つの原因」でも、業務整理や目的設定の重要性を解説しています。
AI導入では既製サービスと個別開発を使い分ける
AI活用には、大きく分けて次の選択肢があります。
- 既存のAIサービスを利用する
- ノーコード・ローコードツールで構築する
- 既存システムとAIを連携する
- 専用システムを個別開発する
定型的な業務であれば、既存サービスで十分な場合があります。
一方で、自社独自の承認ルールや顧客管理方法がある場合は、連携開発や個別開発が必要になることもあります。
重要なのは、最初から大規模なシステムを開発することではありません。
既存サービスで試し、効果と課題を確認してから、必要な部分だけを開発する方法もあります。
相談先を判断する際は「AI活用コンサルタントとAIシステム開発会社の違い」も参考にしてください。
AI導入支援で得られるのは「自動化」だけではない
AI導入によって期待できる効果は、作業時間の短縮だけではありません。
- 入力方法を統一できる
- 対応漏れを減らせる
- 情報を社内で共有できる
- 担当者への業務集中を軽減できる
- 対応履歴を残せる
- 業務の属人化を減らせる
- 改善状況を数値で確認できる
特に中小企業では、一人の担当者に多くの業務が集中することがあります。
AIとシステムを組み合わせることで、担当者の記憶や経験だけに依存しない業務へ変えていくことができます。
よくある質問
AIを導入すれば、経費処理を完全に自動化できますか?
領収書の読み取りやデータ入力は自動化できますが、経費として認めるか、勘定科目が適切かといった判断には人の確認が必要です。最初はAIによる候補提示と人による承認を組み合わせる方法が現実的です。
AI電話受付は、どのような企業に向いていますか?
少人数で電話対応が業務の妨げになっている企業、営業時間外の電話を受けたい企業、定型的な問い合わせが多い企業に向いています。ただし、複雑な相談や緊急対応は人へ引き継ぐ設計が必要です。
CRMを導入しても社員が入力してくれません。AIで解決できますか?
AIによってメールや商談記録を要約し、入力項目の候補を作ることは可能です。ただし、入力ルールが複雑すぎる場合は、先に管理項目や運用方法を見直す必要があります。
AI導入では既存システムを入れ替える必要がありますか?
必ずしも必要ありません。現在使っている会計ソフト、表計算ソフト、メール、CRMなどと連携できる場合があります。既存環境を確認したうえで判断します。
AI導入支援とAIシステム開発のどちらを依頼すべきですか?
対象業務や改善方法が決まっていない場合は、業務整理を含むAI導入支援から始めます。必要な機能や仕様が明確な場合は、AIシステム開発を検討できます。
名古屋の中小企業でも小規模に始められますか?
はい。最初から全社へ導入する必要はありません。領収書処理、電話受付、問い合わせ整理など、一つの業務に絞って検証する方法があります。
まとめ
AI導入で大切なのは、高性能なAIを導入することではありません。
現在の業務を整理し、
- AIに任せる処理
- システムで自動化する処理
- 人が確認・判断する処理
を適切に組み合わせることです。
経費処理では、領収書の読み取りから確認・台帳登録までをつなぎます。
電話受付では、電話に出るだけでなく、用件を整理して担当者へ引き継ぎます。
顧客管理では、情報を保存するだけでなく、次に必要な対応が分かる状態をつくります。
AI導入の目的は、AIを使うことではなく、現場の業務を改善することです。
有限会社シーエスプラスでは、名古屋の中小企業を対象に、業務課題の整理からAI活用の検証、既存システムとの連携、業務システム開発まで一貫して支援しています。
「自社のどの業務にAIを使えるか分からない」という段階からでも、お気軽にご相談ください。
